新義真言教学研究会 報告
智山伝法院宗学研究室では、「新義真言教学研究会」という研究会を行い、新義真言宗の祖たる頼瑜僧正が撰述された『十住心論愚草』を翻刻・訓読する作業を行っている。この研究会は、次の四点を主な目的に開催するものである。
①頼瑜僧正の著作を読み解くことで、新義派の教学的特徴を明らかにすること。
②論義書を用いることで、新義派、ひいては本宗の論義法会の思想的内容について理解を深めること。
③未翻刻の著作を用いることで、若手研究員に崩し字に慣れてもらうこと。
④共同研究会「真言教学研究会」に参加するにあたっての基礎的研究。
④の真言教学研究会とは、高野山大学、大正大学豊山研究室と共に発足した研究会で、新義真言教学研究会も真言教学研究会の発足当初より参画している。この真言教学研究会は、広く真言宗学の修学の歴史や思想の展開といった問題を、新義・古義の両面から明らかにしようと試みる研究会であり、年に二回ほどのペースで研究発表、講演会等を開催している。令和六年度第一回研究会では、高野山上の論義法会の実際を理解することを目的に、高野山金剛峯寺で行われる勧学会を聴聞した。
令和六年度第二回真言教学研究会は、令和七年二月二十日に別院真福寺において開催され、赤塚祐道先生より「聖教が伝える学山の姿―天野山金剛寺の伝法会―」、佐藤もな先生より「道範の教主義」の発表がなされた。
赤塚先生は、さまざまな資料を提示しながら、天野山金剛寺の伝法会が平安時代末より江戸時代末まで形を変えながらも連綿と行われていたことを報告された。また金剛寺聖教には、高野山大伝法院で行われていた伝法会の様子を伝える資料があるとし、金剛寺で行われていた伝法会に、高野山大伝法院の影響があったのではないかと指摘された。すなわち金剛寺聖教が、新義の論義法会の様相を知る手がかりとなる可能性を秘めた非常に貴重なものといえよう。
佐藤先生は、高野山の四傑の一人と称される道範の教主義が、三点説という特徴的なものであると示された。そしてその三点説には、師である静遍からの影響がみられると指摘された。新義・古義の教学の大きく相違するその根幹が教主義であり、道範の教主義を知ることは、新義派の加持身説の特徴や、古義派の提唱する本地身説との相違を知ることに直結するといえよう。
令和七年度も、開催日は未定ながら、講演会と研究発表会を開催し、引き続き真言宗学の歴史・思想の両面から研究を行う予定である。
常勤講師 別所弘淳
